リスクのある金融取引の発見 (全国賃貸住宅新聞11/10号掲載)


            執筆者/AVANCE LEGAL GROUP LPC 代表弁護士  片山 雅也
                                         パートナー弁護士  家永 勲


 M&A
の実行前の法務DDにおいては、リスク事項の発見は非常に重要な課題でありますが、対象会社が取引価格に大きな影響を与えるような金融取引を行っている場合があります。

かつて、銀行や証券会社においては、デリバティブ取引などの勧誘が盛んに行われ、多くの企業に対して融資と合わせて、金融商品の取引が勧められていました。

確かに、輸出入を行うような企業であれば金利スワップの取引などが為替変動のリスクヘッジとして機能することもありますが、不動産業界においては多くの場合は投機目的であることが実情です。

銀行からの融資などと同時にデリバティブ取引が実行されている場合には、貸付金のほとんどが金融商品に費消されていることもあるうえ、損失が生じる場合には、貸付金額を超過するようなケースもあります。

デリバティブ取引を行っていることは決算書等から容易に発覚しますが、決算書の記載からはどの程度の利益又は損失が生じているのかは分かりません。利益又は損失の規模を確定させるためには、デリバティブ取引の契約書を確認して、いくつの基本取引が行われており、それぞれの現時点において解約した場合の損失額の確定を取引先へ照会する必要があります。

その際には、これまでに生じた損失に加えて、途中解約の違約金が上乗せされることが一般的です。取引規模にもよりますが、数億円という規模での損失が生じていることもさほど珍しくありません。

それでは、損失額をそのまま受け入れなければならないかというと必ずしもそうとは言えません。利益を生じさせることもありますが損失の規模も莫大である金融商品については、金融商品を取り扱う企業においても、高度な説明義務が課されることになっていますが、説明義務が尽くされていない場合には、損害賠償請求の対象となりえます。そのため、金融ADRや裁判手続を利用しながら、損失額の減額又は返還等を求める方法を検討することとなります。

しかしながら、これらの手続きには時間が必要であるため、M&Aの実行時点までに決着をつけることは困難です。そこで、実行時においては損失額を含めて、取引実行額を決定するか、それとも金融ADRの結果等が出る時点において、株式譲渡実行金額の変動を予定して条件等を定めておくなど、デリバティブ取引による損失を一方的に被ることの内容に十分に考慮して、契約条件を定めていく必要があると考えられます。

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産休・育休後に配置転換・降格(高齢者住宅新聞11/5号掲載)


  執筆者/AVANCE LEGAL GROUP LPC 執行役員・弁護士 家永 勲

 ニュースにもなっていましたが、産休や育休を利用して復帰した女性に降格を命じられたことが有効か否かという点について、最高裁の判例が出ました。最高裁の事例は医療施設でしたが、医療施設に限らず高齢者施設を含むあらゆる労働環境においても直面しうる問題であろうと思われます。

正社員であった女性従業員は、副主任としての地位にあり、子どもを妊娠したため、妊娠中は軽易な業務に従事する旨希望したところ、異動先には経験年数が当該女性従業員よりも豊富な者が所属していたので、副主任の地位を免じられることに渋々ながらも同意に至り、異動となりました。その後、当該女性従業員は、産休及び育休を経て、復帰しました。その際には軽易な業務に従事する以前に所属していた部署に配属となったものの、副主任としての地位が認められなかったため、産休及び育休の取得により不利益な取り扱いがなされたとして提訴に至りました。

最高裁においては、当該医療施設が行った副主任としての地位を免ずるという措置及び管理職手当の喪失という結果は重大な不利益であり、特段の事情がない限り、降格措置は違法であり無効となるとして、特段の事情の有無を判断するために高裁へ差し戻されました。

最高裁は、ー由な意思に基づいて降格に承諾したと認めるに足りる合理的な理由が存在するか、降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに業務上の必要性から支障がある場合であって、男女雇用機会均等法の趣旨及び目的に実質的に反しないと認められる特段の事情がある場合でなければ、降格措置などの不利益措置は許容されないとしています。

最高裁における判断理由は仔細にわたりますが、重要と思われるポイントの一つは、降格について十分な説明が尽くされていたかという点です。復職後の管理職への復帰が可能であるのか否かあいまいなまま降格に承諾するに至ったという点が不十分とされています。次に、施設において当該女性従業員の後任となる副主任を間もなく選任しており、当該女性従業員が育休からの復帰後、管理職へ復帰することを予定してことが伺われないことも重視されています。最後に、軽減措置として行われた管理職の任を解くということが、一体どれほどの業務軽減になったのか明らかではないという点です。実質的に軽減措置になっていないのであれば、業務の軽減ではなく管理職手当を削減するために行ったとみられかねないということを示していると考えられます。

今後は、高裁にて再度、特段の事情の有無について審理されることになりますが、最高裁が示した方向性を踏まえた、産休育休制度への理解が求められてくると思われます。

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これからはあなたも宅地建物取引「士」!(ニューズレター【不動産業界】vol.2掲載)

執筆者/AVANCE LEGAL GROUP LPC 代表弁護士 家永 勲
執筆者/AVANCE LEGAL GROUP LPCアソシエイト・弁護士 中村 圭佑

先生!
今度何やら法律が改正されて、宅地建物取引「主任者」だった僕が、宅地建物取引「士」に変わるそうですね!!僕も士業ということで、飲み屋とかでも先生なんて呼ばれちゃったりしてモテモテになるんですかねえ。でも、名前が変わって響きが良くなったのは分かるんですけど、具体的にはいったい何が変わるんですか?

名称以外では、大きく、
\賁膕箸箸靴得嫻い鮖って業務処理する義務が明確となったこと
⊃用失墜行為の禁止
K塾話聴等の排除
そ抄醗の教育義務が新設されること
になりました。
ちなみに現在お持ちの宅地建物取引主任者証は継続して使用できますが、希望者には手数料と引き換えに宅地建物取引士証と交換してもらえるようです。

さらに詳しく:
宅地建物取引業法の一部を改正する法律(以下、「改正後宅建業法」といいます。)が、今年(平成26年)6月25日に公布され、来年(平成27年)4月1日から施行されることになります。当該改正は、宅地建物取引主任者を宅地建物取引士と名称変更することで、専門家としての立場を強化し、かつ意識してもらい、不動産売買や賃貸における流通、及び依頼者等を保護することを目的としています。

以上のような目的から、宅地建物取引士という名称変更のみならず、\賁膕箸箸靴討寮嫻い鯡棲里砲垢襪燭瓩法⊇祥茲梁襍業法15条を変更し、「宅地建物取引士の業務処理原則」として、「専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実に」業務を遂行する義務が規定されました(改正後宅建業法15条)。また、同条では、中古住宅の瑕疵やリフォーム等に関して保険業者やリフォーム業者等との連携を図るべく、「宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携」義務も規定されています。
 
また、∪賁膕箸箸靴討寮嫻さ擇喇奮覆魄飮・強調するために、「宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない」と規定され(改正後宅建業法15条の2)、また「必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない」とされました(改正後宅建業法15条の3)。我々弁護士も、「常に、深い教養の保持と高い品性の陶やに努め、法令及び法律事務に精通しなければならない」(弁護士法2条)とされており、宅地建物取引士も、士業として高度な責任、品格及び能力が期待されることになります。
 
そして、不動産業界にも未だ関与しようとする暴力団員等との関係を断つこと等も含め、宅地建物取引士の免許交付の際の除外事由として、暴力団員である者(暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者も含み、併せて「暴力団員等」と規定されています。)、及び暴力団員等がその事業活動を支配する者が規定されます(改正後宅建業法5条1項3号の2、同項8号)。 
 
さらに、だ賁膕箸箸靴峠抄醗を雇用等する者については、当該従業員にも同様に責任のある専門的な業務であることへ自覚を持って、遂行すべく、「従業者に対し、その業務を適正に実施させるため、必要な教育を行うよう努めなければならない。」と規定されました。当該規定により、従業員の業務により生じた問題が、より一層宅地建物取引士の責任として認定されやすくなると考えられますので、従業員の教育には今まで以上に注意を払わなければなりません。

以上のように、名称の変更に伴い、専門家としての社会的役割を求められるようになったことから、高度な責任が生じることになり得ますので、専門家としてより一層の品格を維持しながら、不断の努力を重ねていかなくてはなりません。全国宅地建物取引業協会連合会も、法改正に伴い倫理規定や研修等の新設を予定しているようですので、当該規定を遵守し、研修等に参加することも求められるようになると考えられます。


※ 当記事は、2014年11月発行「AVANCE LEGAL GROUP LPC ニューズレター」【不動産業界】vol.2に掲載した内容です。
本ニューズレターは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。
AVANCE LEGAL GROUP LPC 企業法務ホームページにて、PDF版ニューズレターをご覧いただくことができます。
http://www.avancelegalgroup-lpc.com/

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