税理士補助業務に従事する者は、専門業務型裁量労働制の対象とならないとされ、未払賃金等請求が認められた事例 〜東京高裁平成26年2月27日判決〜(ニューズレターvol.30掲載)

執筆者/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ 代表弁護士 片山 雅也
執筆者/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ 大阪支部長・弁護士 長田 弘樹

機〇案の概要
 Y1社は、金融、財務、資産管理等の総合コンサルティング業務を目的とする株式会社であり、Y2法人は、税理士法人であり、いずれも代表者や従業員がほぼ同一でした。Xは、平成22年1月1日、Y1社らとの間で税理士の補助業務を行うスタッフとして労働契約を締結し、同年9月末日にY1社らを退職しました。なお、Xは、公認会計士試験に合格していましたが、退職時までに税理士資格を有していませんでした。
 Xは、Y1社らに対し、時間外労働についての割増賃金の未払いがあるとして、ヽ篩賃金及びこれに対する最終給与支払日の翌日からの遅延損害金、付加金及びこれに対する判決確定の翌日からの遅延損害金を、それぞれ連帯して支払うことを求めて提訴しました。
 これに対し、Y1社らは、Xには専門業務型裁量労働制が適用されるなどと主張して争いました。

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  \罵士以外の従業員に対する専門業務型裁量労働制が適用されず、割増賃金の支払いが必要となるか。
 ◆。悗深夜労働及び法定休日労働に対する割増賃金の支払いを請求できるか。
  Y1社らが遅延損害金を支払う場合の額はいくらか。
 ぁ”娉旦發了拱ГΔ戮場合にあたるか。あたるとすればその額はいくらか。


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<争点 
 専門業務型裁量労働制の対象となる「税理士の業務」は、税理士資格を有し、税理士名簿への登録を受けた者自身を主体とする業務をいうのであるから、税理士以外の従業員が、実質的に「税理士の業務」を行うものと評価して専門業務型裁量労働制の対象とするためには、少なくともその業務が税理士又は税理士法人を主体とする業務でなければならないと判断しました。
その上で、Y1社はそもそも税理士法人ではないため、Y1社の従業員でもあるXが、Y1社に対して提供する労務は税理士又は税理士法人を主体とする業務ではないとしました。そして、Xは、Y1社及びY2法人と雇用契約を締結しており、労務の提供先がY1社、Y2法人のいずれかは判然としないことから、Y1社に対する労務提供が「税理士の業務」でない以上、Xの業務について専門業務型裁量労働制を適用できないとしました。
<争点◆
 Y1社らの就業規則には、みなし労働時間が所定労働時間を超える部分については割増賃金を支払うこと等を内容とする規定があり、裁量労働適用者が、休日又は深夜に労働する場合、あらかじめ所属長の許可を受けなければならないとされていました。
 しかし、争点,砲弔い董■悗専門業務型裁量労働制の適用を受けないと判断されたことから、上記規定も適用されず、Xの所属長が許可を与えたかどうかを問わず、Y1社らはXに対し割増賃金を支払う義務があると判断しました。
<争点>
 遅延損害金の額については、賃確法等6条2項の適用除外は問題とならないため、同法6条1項の規定により、割増賃金201万4333円に対する平成22年10月6日から支払済みまで年14.6%の割合による遅延損害金を支払えと判断しました。
<争点ぁ
 Y1社らの割増賃金未払いは、法令の解釈等を誤ったことに起因するものであり、必ずしも悪質とはいえないが、他方で本件訴訟では明らかに法令違反の主張を展開し、Xに対する未払割増賃金の支払いをしようとしなかった態度等からすれば、付加金として20万円を支払いを命じるのが相当と判断しました。


検々義平拡酬茲糧獣
<争点 筺ΑΑΨ誅世楼飮。理由づけが異なる。
 専門業務型裁量労働制の対象となる「税理士の業務」は、税理士資格を有し、税理士名簿への登録を受けた者自身を主体とする業務をいうのであるから、Xが税理士となる資格を有せず、税理士名簿への登録も受けていなかったのであるから、専門業務型裁量労働制の対象とはならないと判断しました。
<争点◆筺ΑΑβ莪貎拡酬茲魄飮。
<争点>・・・第一審判決を変更。
 遅延損害金の額について、賃確法施行規則6条4号に「裁判所または労働委員会で争っていること」などが規定されていることから、賃確法6条2項の適用除外事由が認められるとして、Xの未払割増賃金に対する遅延損害金は、商事法定利率6%によるべきと判断しました。
<争点ぁ筺ΑΑβ莪貎拡酬茲鯤儿后
 付加金を命じるのは相当ではないと判断しました。


后)楮枷塾磴砲澆觴駄海砲ける留意事項
 本件では、専門業務型裁量労働制の適用につき、19種類の対象業務に該当するかどうかが争われました。基本的には、労基則24の2の2に規定された19種類の対象業務にあたるか否かについてはそれほど争いにならないのですが、周辺業務については対象業務該当性が問題となるわけです。第一審では労務提供先が2種類あり、その一つが税理士法人でないことを理由として該当性を否定したのに対し、控訴審はXに税理士資格がなく税理士登録をしていないことで否定しています。類似事件として、エーディーディー事件(大阪高判平成24.7.27)があります。
 遅延損害金の計算は、賃確法6条2項の適用除外が問題となり、第一審では適用除外にあたらないので14.6%の遅延損害金の支払いが命じられ、控訴審は逆に適用除外にあたるので、原則に戻って商事法定利率の6%の遅延損害金の支払いが命じられました。したがって、訴訟係属している場合は、商事法定利率によると考えてよいと思われます。
 付加金については、使用者側の態度等を総合的に勘案し、悪質な場合にその支払いを命じるということになりますが、今回は法解釈の適用を誤ったとのことが評価され、付加金の支払いを命じるほどのこととはなりませんでした。
 

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ベネッセ情報流失事件から学ぶ個人情報(ニューズレター臨時号vol.1掲載)

執筆者/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ 代表弁護士 片山 雅也
執筆者/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ パートナー弁護士 山 岸 純


Q
先月、学習教材の会社から個人情報が漏えいし、
派遣社員が逮捕されたり大変なことになっているようです。
「個人情報を勝手に持ち出した派遣社員や個人情報の管理委託を受けた会社が悪い。
個人情報を持ち出された会社も被害者だ」という面もあるような気もしますが、
同じようなケースが生じた場合、会社の責任などはどうなっていくのでしょう。
また、このような事件を起こさないように注意すべきことはあるのでしょうか。 


A 
個人情報の管理委託を受けた会社や派遣社員への責任追及は、会社と個人情報の管理委託を
受けた会社や派遣社員の間のことであって、 個人情報を漏えいされた一般の顧客からしてみ
れば、「個人情報を漏えいした主体としては、会社も個人情報の管理委託を受けた会社や派遣
社員も同一」です。したがって、会社は一般の顧客に対し、損害賠償責任を負うことになる
可能性があります。このような事件を未然に防ぐためには、会社として、最低限、
‐霾鵑悗離▲セス制限とアクセスログの保存、
⊂霾麝用時のマニュアルの整備、
8朕余霾麒欷酲,亡陲鼎個人情報保護責任者のスキルアップ、
そ抄醗の教育等について真剣に取り組む必要があります。 


機ジ朕余霾鵑箸 
「個人情報」とは、生年月日・性別といった先天的な情報や、氏名・住所といった後天的な情報によって「個人」を
特定し得る情報をいいます。
高度に情報化した現代社会においては、このような「個人情報」が自分の知らないところで知らない形で勝手に利用
されていたり、悪用される恐れも多々あります。そこで、今日では、自分の「個人情報」を、誰が、どのような目的
で保有し、どのように利用しているのかを自分でコントロールすることが権利として認められるに至っています(通
説的見解)。
そして、このような権利を実効性あるものとするため、平成15年5月、5000件以上の「個人情報」を「データベー
ス化」して「事業のために用いている事業者」を「個人情報取扱事業者」とし、個人情報保護のための様々な措置、対
策を講じるよう義務付ける法律が制定されました。
つまり、「個人」には「自分の情報をむやみに知られたくない」、「間違った情報を訂正したい」という要望があるわけで、
これが憲法上も法律上、保障されているわけです。


供ヂ山嫁綵リスク 
 したがって、自分の知らないうちに、自分の「個人情報」がカネで売られて拡散されることは、当然、本人の好まざる
ところですので、このような行為を「故意」又は「過失」によりに行えば、不法行為(民法709条)が成立し得るわけです。
実際、ある大学が外国要人の講演会に参加する学生の「個人情報」を、当該学生の同意なく警視庁に開示した事件につき、
最高裁判所は当該大学に対し、学生一人につき金5000円の慰謝料(精神的損害)の支払いを命じています。 
今回の事件と同様の事件が生じた場合も、情報を漏えいされた一般の顧客にとっては、個人情報を漏えいした「個人情
報管理の委託を受けた会社」や「派遣社員」も「会社」の一部にしか見えないわけですから、「個人情報の管理を委託
した会社や派遣社員の仕業なので会社は関係ありません」といった対応は困難だと思います。
もちろん、今回の事件は「組織的な漏えい行為」ではありませんし、上記の事件とは “質” が異なりますが、「会社が管
理監督すべき範囲にある者の故意行為」によるものであり、会社にも「過失」があるものとして、損害賠償責任を負う
可能性は否定できないと考えられます(なお、上記の個人情報取扱事業者に該当するか否かで結論が異なるわけではあ
りません)


掘ゲ饉劼梁弍
次に、会社として「個人情報」の漏えい事件を未然に防ぐ方法としては、上記のとおり「個人情報」の管理を徹底する
ことももちろん大切ですが、何よりも「従業員教育」が重要かつ堅実な方法です。
そして「従業員教育」では、「個人情報を大切に保護しましょう」といったように、単なる “紙しばい” 的に説くのではなく、
実際の例を紹介するなどして「個人情報」が漏えいしてしまった場合に発生する会社のレピュテーションリスク、売上
の減少、損害賠償請求、そしてこれらを原因とする会社の倒産、従業員の給与のカット、解雇など、現実的なリスクに
ついて恐々と伝え、「自分にも降りかかる現実的なリスク」として実感させることが肝要です。


要するに、形式上、「個人情報」の管理を謳い、例えば、要件だけを満たし「Pマーク」の
認定を受けたからといって “それだけで満足していたのでは” 実質的なリスクを回避できません。 
 

※ 当記事は、2014年8月発行「弁護士法人アヴァンセ ニューズレター」臨時号Vol.1に掲載した内容です。
本ニューズレターは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。
弁護士法人アヴァンセリーガルグループ・企業法務ホームページにて、PDF版ニューズレターをご覧いただくことができます。→ http://www.avance-lg.jp/
 

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振り込め詐欺被害の救済法(高齢者住宅新聞8月26日号掲載)

執筆者・弁護士法人アヴァンセリーガルグループ 執行役員・弁護士 家永 勲 
 
 前回は、高齢者が巻き込まれやすい消費者被害を題材に相談事例を紹介しましたが、今回は、高齢者の方が巻き込まれやすい振り込め詐欺の救済法に関する法制度をお伝えしようと思います。

振り込め詐欺に関しては、警察及び消費者庁などから注意喚起が継続的に行われており、振り込め詐欺自体を知らない人はほとんどいなくなっているのではないでしょうか。それでも、被害は継続しており、平成25年中には全国で5400人、約171億円の被害があったと発表されています。被害はいまだに止まず、手口が巧妙化する一方です。

振り込め詐欺の救済については、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」が施行されています。

手続きの流れは、詐欺その他財産を害する犯罪行為に預金口座への振り込みが利用された後、当該預金口座を有する金融機関へ情報提供を行い、犯罪利用の疑いがあると認められた場合に、当該預金口座における取引が停止されます。取引が停止されれば、その預金口座に残っていた残高について、分配に向けた手続きが取られることになります。具体的には、公告手続きを行うことで、預金名義人が預金口座からの引き落としを行う権利を消滅させるとともに、同じ預金口座へ振り込みを行った被害者を募り、被害者全員で分配することになります。なお、公告手続きは、預金保険機構のホームページで行われており、すでに振り込みを行ってしまった場合には、既にほかの被害者の方が手続きを行い、取引停止となっていないか確認することができます。

金融機関への情報提供については、弁護士会と各銀行の間で取り決めが行われており、弁護士に依頼を行って所定の書式を利用して行うことによって、取引停止措置については可能な限り速やかに行われるようになっています。しかしながら、振り込みの時期から暫く経ってしまうと、振り込んだ金員はすでに引き出されてしまっており、口座の残高は非常に少額になってしまっている例も少なくありません。

救済手続きをとることなく、泣き寝入りする必要はありませんので、まずは弁護士へ預金口座の取引停止を依頼することが第一です。しかしながら、実効性の観点からは必ずしも満足のいく結果が得られないこともありますので、やはり被害が生じる前に予防することが非常に重要であり、いまだに振り込め詐欺に関する被害が止んでいないことは十分に認知してもらう必要があると思います。 

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