事故物件にまつわる法律問題(全国賃貸住宅新聞3/9号掲載)

執筆者/AVANCE LEGAL GROUP LPC  代表弁護士    片山 雅也
                                 執行役員 弁護士 家永 勲

【相談内容】

最近、出入りがほとんどない賃貸物件があったので、警察立ち会いのもと、安否確認として、部屋の鍵を開けてみたところ、入居者の方が、浴槽で亡くなっており、状況からすると自殺されたように見受けられました。

後日、親族の方と連絡を取ったところ、相続人としてご両親がおられる様子でした。

ご不幸があったところではありますが、賃貸物件内で自殺されたことによって、新たに貸し出すことも難しくなっており、賃料収入相当額や部屋の処理や修繕にかかった費用などを請求したいと思いますが、どの程度請求できるのでしょうか?

【回答】

自殺等があった賃貸物件は、いわゆる「事故物件」と呼ばれており、裁判例においては、当該自殺があった事実ということは、心理的な嫌悪感などを生むものとして、部屋の瑕疵、すなわち欠陥や不具合と同視されています。

したがって、部屋の中で自殺をするという行為は、賃貸物件に傷を負わせるものと同様に、部屋の価値を減少させ、賃貸人の財産に対する侵害と考えられますので、賃借人は、部屋の中で自殺しない義務を負担しているものと考えられます。そのため、賃借人が自殺をした場合には、当該義務違反を理由として、損害賠償を請求することができるということになります。

ただ、ご本人は亡くなっていますので、賃借人の相続人が請求先ということになります。なお、連帯保証人を付けている場合には、原則として、当該連帯保証人も連帯して、損害賠償をしなければならないため、当該連帯保証人も請求先の候補になります。

最後に、いくらの損害が請求できるかという点についてですが、今回のケースであれば、浴槽での自殺ということですので、当該浴槽の交換費用はまず認められると考えられます。その他、部屋のクロスの張替など、原状回復にかかる費用については、自殺が原因で特に汚れたり、傷がついたりした箇所があれば、当該汚損又は損傷個所についても請求できると考えられますが、全てを張り替えなければ嫌悪感を払しょくできないという主張は認められないと考えられます。加えて、今後、貸し出す際には、賃料を減額して貸し出さざるを得ないため、賃料減額分についても損害賠償の対象となります。

裁判例においては、どの程度の賃料減額が相当化について、ケースに応じてさまざまな判断となっておりますが、1年分から2年分の賃料相当額程度に留められることも多いのが実情と思われます。

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妊娠中の女性労働者の不利益取り扱い

           執筆者/AVANCE LEGAL GROUP LPC 代表弁護士 片山 雅也
                                        弁護士 増谷 嘉晃


 物流業界においては、男性のみでは配送人員などの確保が難しくなっていることを背景に、女性従業員を増員する企業が増えています。
雇用機会均等法は、女性労働者について、妊娠、出産等を理由とする不利益取り扱いを禁止しています(雇用機会均等法93項)が、この点について、平成261023日に最高裁の判決がでました。本判決は、医療施設の事例でしたが、女性の活躍が拡大している昨今では物流業界における労務管理においても注目すべき判決と考えられます。

 本件は、管理職である副主任の職位にあった女性従業員(以下、「X」といいます。)が、労働基準法653項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換に際して、副主任から非管理職の職員に降格させられましたが、育児休業の終了後も副主任に戻されることはありませんでした。そこで、Xが、被告(以下、「Y」といいます。)が、Xを副主任から降格させた措置(以下、「本件措置」といいます。)は、雇用機会均等法93項に違反する無効なものであると主張して、Yを提訴しました。

 原審(高等裁判所)は、本件措置を、人事権の裁量の範囲内であると判断しましたが、最高裁は、軽易業務への転換を契機として女性労働者を降格させる事業主の措置は、原則として同項の禁止する取扱いに当たるとした上で、ー由な意思に基づいて降格を承諾したものと認める合理的理由が客観的に存在するとき、又は業務上の必要性から支障がある場合であって、同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときには、同項違反とはならないとしています。

 それでは、本判例に関してどのような点に注意すればよいでしょうか。

 まず、特段の事情の有無(◆砲砲弔い討蓮⊃獲が不十分であるとして原審に差し戻しており、具体的にどのような場合であれば特段の事情が認められるかは明らかにされておらず、今後の判断が待たれます。

 次に、合理的理由( 砲陵無について、本件では、Xは、渋々ながらも降格を了解していました。しかし、Yは、本件措置の時点でXの副主任への復帰を予定していなかったにもかかわらず、その旨をXに説明しておらず、Xは、副主任への復帰の可否などにつき事前に認識を得る機会を与えられていませんでした。このことが重視され、Xが自由な意思に基づいて降格を承諾したとはいえないと判断されています。

 このことから、妊娠中の女性従業員に対して、降格に限らず不利益な取り扱いと解釈される可能性がある人事的な措置をする場合には、十分に説明を尽くし、従業員の真摯な承諾を得ておくことが重要であると考えられます。

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外国人労働者を雇用する場合における留意点

              執筆者/AVANCE LEGAL GROUP LPC 代表弁護士 片山 雅也
                                              弁護士  那賀島 八起


 物流業界では、昨今、人材不足を補うために、外国人の雇用を検討する企業が増えています。この点、外国人はトラックドライバーとして就労ビザを取得できませんが、技能実習生を雇用し、仕分けや配送作業を担当させている企業が多いようです。そこで、今回は外国人労働者を雇用する際に、日本人の労働者を雇用する場合と比べて特に注意すべき点について確認していきます。

雇用にあたっては、まず、外国人労働者の在留資格及び在留期間を確認し、日本国内で就労ができる人材か否かを確認することが重要です。この点、出入国管理及び難民認定法は、外国人の不法就労を防止するために、不法就労助長罪という犯罪を定めています。すなわち、外国人が、不法に入国して就労すること、在留資格ごとに認められている活動の範囲を超えて就労すること、在留期間を超えて就労すること等を知りながら雇用した者には、不法就労助長罪が成立し、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が予定されています(同73条の2第1項)。この不法就労助長罪は故意がある場合だけでなく、過失があるに過ぎない場合についても成立し得ます(同法同項2号)。たとえば、事業主が不法就労者であることを知らずに雇用したとしても、応募者の名前や話し方などから、明らかに外国人であることがわかったにもかかわらず、パスポートや在留カードを何ら確認することなく雇い入れたような場合は、「知らなかった」では済まされず、過失により、不法就労助長罪に問われる可能性がありますので注意してください。

このほか、事業主には外国人労働者の雇入れ又は離職の際に、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間等について確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることが義務付けられています。当該届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります(雇用対策法28条、38条1項2号)。

事業主が外国人労働者を雇用した場合、当該外国人労働者が日本国内で就労している限り、日本の労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などの法律が適用されます。とりわけ、労働基準法3条が「労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と規定していますので、外国人であることを理由に賃金形態や昇給基準等において差別的な取扱をすることや、外国人のみに適用される就業規則を作成して日本人労働者と異なる労働条件を規定すること等は違法となります。外国人であることを理由とする差別的な取扱いに対しては、労働基準法上、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰則が定められています(労働基準法119条1号)。

外国人を雇用する際は、法律で定められた手続きを行う必要があるほか、国籍等を理由とする差別的な取扱をしないように、留意する必要があるといえます。

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